リコー グループはどのようにしてサービス カンパニー化を果たしたのか。

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  • リコー
  • 顧客ロケーション 日本・東京
  • 業界 製造
  • プラットフォーム Office 365
  • AvePoint ソリューション Cloud Governance クラウド

顧客紹介

国際化に伴う市場競争の激化は、ハードウェア業界に深刻なコモディティ化を引き起こしました。"モノ売り" に閉じたままでは国際的な競争力を維持できない、こうした時代が訪れているのです。ハードウェアに "コト" という価値を付加する、これによってサービス カンパニー化を進めることが、今日の製造業には求められています。

2019 年 1 月にサブスクリプション モデルの複合機「RICOH IM Cシリーズ」および業務効率化クラウド サービス「RICOH Always Current Technology」を発表したリコーは、同リリースに表れるようにサービス カンパニー化を強く推し進めている 1 社です。

リコーの取り組みがユニークなのは、従来の製造業が主としていた縦軸の "ピラミッド型" から多様な業種・職種が協働する横軸の "フラット型" へと、ビジネスの構造を大きくシフトしていることです。

ビジネスの構造変革は、社員 1 人ひとりの業務や意識を変えることでもあります。同社は、これまでのビジネスを支えてきた業務基盤である Notes 環境をクラウド ベースの Office 365 へと移行。そしてこれを " 構造変革" の象徴とし、SharePoint Online や Microsoft Teams ( 以下、Teams) など横軸のコミュニケーションを支援するツール、さらには Office 365 の備えるこれらツールの円滑な利用を促進する 3rd Party ツール AvePoint Online Services も大いに活用することで、サービス カンパニー化を大きく加速させています。

この歩みが大きく進んでいることは、「RICOH Always Current Technology」のAPI を公開してオープンなアプリ開発体制を目指すなど、リコーの近年の姿に明確に表れています。

挑戦

業務基盤の刷新が、"リコーが変わる" ことのシンボルになる

部品を供給するメーカーや製造工程、社内部門を細分化して、" 製品の完成" に向けた縦軸のチェーンを構築する。"ピラミッド型" と呼ばれるこうしたビジネス構造は、製造業の製造効率を長年支えてきました。しかし、サービス カンパニー化が求められる今日においては、この "ピラミッド型" の存在がボトルネックとなっていると言います。

日本でも有数の製造業である株式会社リコー デジタル推進本部 部長の鈴木 弘之 氏は、縦に連なった組織構造はシステムや業務プロセス、コミュニケーションにサイロ化 ( 他との連携を持たずに自己完結する、孤立してしまう状態) を引き起こすと説明。そしてこれは、ビジネスシフトを困難にさせると述べます。

「"ピラミッド型" では各製造工程、各部門における役割を自己完結することが優先されます。そもそもサイロ化が問題視されないため、当社も含む多くの製造業がこのサイロ化に陥っていたと言えるでしょう。

サービス カンパニー化にあたっては部門や企業をまたがった横連携が不可欠ですから、業務を 標準化して連携を取りやすくする、そのために業務プロセスやワーク フローにあるブラック ボックスを明らかにしていくことが求められます。

何が難しいかというと、こうした標準化は現場に少なからぬ負担を強いるということです。業務自体が変わりますから、無理に進めては現場と管理部門との間で コンフリクトが生まれてしまうのです。社員 1 人ひとりの意識を " 業務はフラットであるべき" というものへ寄せていく、この理解を得る取り組みも並行して進めなければ、真のサービス カンパニー化は果たせません」( 鈴木氏)。

サイロ化の解消と社員の意識改革を並行して進める。言葉にするのは簡単ですが、海外拠点を含むグループ全体で 10 万人以上の社員を抱えるリコーにおいて、これは容易ではありません。難題に対してリコーの採った手段は、 長年同社を支えてきた業務基盤の刷新でした。

リコーではこれまで、高い柔軟性を持つ Notes を利用し、カスタマイズ権限とともに各部門へこれを展開してきました。部門が自己完結して生産性を追求する "ピラミッド型" において、Notes は有効に機能してきたと言えます。しかし、鈴木 氏も触れたように、ブラック ボックスを明確にして業務を標準化しなければ、サービスカンパニー化は果たせません。

これを見定めて、同社は 2018 年、Notes から Office 365 へと業務基盤を刷新することを決断します。株式会社リコー デジタル推進本部 オープンコミュニケーショングループ グループリーダーの小林 寛樹 氏は、同取り組みの意図をこう説明します。

「Notes は日々社員が利用する "欠かすことのできないシステム" でした。だからこそ、この環境を一新することが、"リコーが変わる" というメッセージを持つシンボルになると考えました。

当然、少なからぬ影響を現場には及ぼすでしょう。失敗は許されません。そのため、移行先には業務基盤としての有用性だけでなく、10 万 ライセンス規模の基盤移行を成功させるための手厚いサポートが得られることを求めました。Office 365 は、正にこの双方を有していました」(小林 氏)。

AvePoint のソリューション

Office 365、AvePoint Online Servicesを組み合わせることで、部門最適化と業務標準化を両立させる

リコーが Office 365 に対しまず評価したのは、エンタープライズ水準のサポートでした。「Office 365 の競合となるサービスと比較検討しましたし、文書管理やワーク フローなどを個別に採用して組み合わせることも考えました。その上で、我々のような規模の企業と、ワン ストップ且つ密にビジネス交渉を行える相手は、マイクロソフト以外に無いと判断したのです。」こう、鈴木 氏は述べます。

もちろん、Office 365 は機能性についてもリコーから高い評価を得ています。小林 氏は「"Notes の方がよかった" "こんな環境では業務が進められない"、現場にこう思われては意識が変わるわけがありません。贅沢を言うようですが、従来環境にあった " 部門最適化" を維持踏襲しながら企業全体の標準化も進めることを、我々は望みました。」と述べ、Office365 であれば標準化と部門最適化の両立を目指すことができたと語ります。これに続けるように、株式会社リコー デジタル推進本部 オープンコミュニケーショングループの太田 健太郎 氏は、小林 氏の言葉をこう紡ぎます。

「Office 365 はカスタマイズ性に優れています。Notes to Office 365 の実績も数多くありますから、" 部門最適化" を維持踏襲するという意味では大きな不安はありませんでした。ただ、サイロ化まで踏襲してしまっては、取り組みの意味が無くなります。

Office 365 の優れている点は、ガバナンス統制を強化するための様々な 3rd Party サービスがあるということです。実際に当社では、Office 365 の補完製品を主に扱う 3rd Party ベンダーである AvePoint Japan が提供する AvePoint Online Services ( アブポイント オンライン サービス) を組み合わせています。これによって、現場では自由度高く Office 365 が利用できる、そのバック グラウンドではしっかりと業務が標準化されているという仕組みを実現しています」( 太田 氏)。

リコーでは従来、各部門が独自に Notes 上で業務サービスを構築してきました。現在はIT 部門が各部門から業務サービスに関するリクエストを受け、IT 部門で構築したサービスを Office 365 でリリースする体制へと変更しています。

この体制では、どのようにして先の両立が実現されているのでしょうか。実際に同作業を担当しているリコージャパン株式会社 ICT 事業本部ICT 技術本部の田尾 優真 氏は、文書管理やポータル機能を提供する SharePoint Online を例に挙げてこのように説明します。

「まず各部門における文書管理・ポータルの用途とニーズを整理しました。そしてこれを基にして " 組織用" " プロジェクト用" " 社内サービス用" "それ以外" という 4 種のテンプレートを用意し、申請ごとにテンプレートを適用して各部門へリリースするという体制を取っています。

テンプレートの適用作業は SaaS プラットフォーム AvePoint Online Services のモジュールである Cloud Governance (クラウド ガバナンス) で自動化しているため、申請からすぐに業務サービスをリリースすることが可能です。テンプレートをユーザー ニーズに概ね応えられるよう設計し、これが活用されることで、各部門のパフォーマンスを既存の Notes での業務以上に引き上げ、尚且つ業務の標準化も進められると考えています」( 田尾氏)。

同氏は、Office 365 へ移行した当初はサイト発行、パーツ配置などを手作業で行っていたと説明。しかし、ユーザーや IT 部門に及ぼす工数負荷が課題化していたといいます。テンプレート作成や Cloud Governance による自動化を進めたことにより、先述した効果が期待できると述べました。

また、Cloud Governance で自動発行されるサイトは、申請者の立場や使用目的に応じて自動的に構成・セキュリティが組み込まれるため、無秩序な拡大や情報の拡散を防止することにもつながります。

SharePoint Online のサイト払い出しの仕組み (上)。テンプレートの作成によって大幅に工数削減が可能となったが、それでもサイトの払い出しには 1 作業で 2 時間を要していたという。AvePoint Online Services (下) による自動化によって即時払い出しが可能になり、工数だけでなく現場へ展開するまでのリード タイムの圧縮にもつながっている

社員の意識にも変化が生まれる

Notes から Office 365 へ移行したことで、リコーにおける業務の標準化は大きく進んでいます。そしてこれと足並みを揃えるように、社員の意識についても変化の兆しが表れているといいます。一例に挙げられるのが、驚くべきスピードで浸透した Teams の活用です。

チャット ベースのコミュニケーションや複数人での電子会議を提供する

Teams は、従来の Notes 環境には存在しないツールでした。ただ、小林 氏は「Teams は有用なツールですが、これまで類似のサービスは社内に無かったため、浸透するかどうかは不明瞭でした。ですが、若い社員が部門を跨いだ社内ベンチャーの取り組みで Teams を利用するなど、部門内、部門間の双方で活用が進んでいます。これまでに無かったような動き、カルチャーが社内に生まれていることを感じます。」と述べ、より適切な形でこれが活用されていくよう、Teams についてもチームのネーミングや用途などをテンプレート化して払い出しを AvePoint Cloud Governance によって自動化していく予定だと語りました。

"メンバー内のコミュニケーションをチーム全体の集合知にできる、こうした有用性が支持され、Teams の活用は驚くべき速度で広がっています。近いうちに Teams でも AvePoint Online Services を利用したチームの払い出しを自動化する予定です。申請すればすぐにチームができる、こうした体制を整備して、ビジネスのスピード感を支えてまいります。"

̶小林寛樹氏:
デジタル推進本部 セキュリティ統括部
オープンコミュニケーショングループグループリーダー
株式会社リコー

続けて鈴木 氏は、こうした " 企業体質の変化" を象徴するような出来事があったと述べ、2019 年 2 月に開催された創業祭「Foundation Day 2019 INNOVATION」について言及します。

「このイベントでは当社の代表が企業の方針を語るセッションがあるのですが、会場の広さには制限があるため従来は一部の社員しかこれを聴講することができませんでした。また、映像で閲覧できるサテライト会場を用意しても、業務を優先する社員が多いのが実情でした。

ですが、今年オンライン中継をブロードキャストで配信するという試みを実施したところ、数多くの社員が自身の PC やスマートフォンからこのセッションを聴講したのです。

オンラインでの会議が浸透していたことも理由にあるとは思いますが、何よりも、Office 365 移行をシンボルに "リコーが変わる" ことをこの数か月で社員が感じたことが大きいでしょう。リコーが掲げるサービス カンパニー化というビジョン、思いが、社員からの理解を得たのです」( 小林 氏)。

鈴木 氏は、Office 365 への移行を機に社員の意識と企業の構造は間違いなく変わったと述べます。リコーは 2019 年 1 月にサブスクリプション モデルの複合機「RICOH IM Cシリーズ」と業務効率化クラウド サービス「RICOH Always Current Technology」をリリースしていますが、こうした動きは正に、リコーがサービス カンパニーへと変わった証左だと言えるでしょう。

Foundation Day 2019 INNOVATION の様子。多くの社員が、ブロードキャスト配信された代表のセッションを聴講したという

業務効率化クラウド サービス「RICOH Always Current Technology」では、2019 年 4 月よりAPI を公開して、他社とも協働しながらオープンなアプリ開発体制を築くことが目指されている。これは、社員の意識やリコーの企業としての構造が変革した証だと言えるだろう

最終結果

"コピーのリコー" から、" 企業変革を支えるリコー" へ

かつての製造業に閉じていたビジネスから脱却し、サービス カンパニーとして新たな歩みをスタートさせたリコー。同社の "コト売り" は、今後、どのような価値を社会に提供していくのでしょうか。

鈴木 氏は、複合機をはじめとする出力機に閉じないソリューションを今後展開していきたいと述べ、このように意気込みを語ります。

「企業の体質を変える。当社自身が身をもって経験して実現したこの実績は、ノウハウとしてお客様に価値提供できると考えています。当社ではOffice 365 を外販としても取り扱っていますから、今後、当社の変革を進めるだけでなく、お客様の変革を支えるような存在になっていきたいと考えています」( 鈴木 氏)。

リコー グループでは、現在、Office 365 と AvePoint Online Services を組み合わせたソリューションについて、提供に向けた準備が進められている

"どのようにして Notes 移行を進めるべきか、どのようなテンプレートを用意すべきか、こうした課題に対し、マイクロソフトと AvePoint Japan からは手厚いサポートの下で本プロジェクトを支援頂いています。私たちが順調にサービス カンパニー化を進められているのは、サポートの存在も大きな理由だと感じています。"

̶鈴木弘之氏:
デジタル推進本部 セキュリティ統括部 部長
株式会社リコー

Office 365 移行を 1 つの手段とし、ビジネス モデルを変えるという大きな一手に出たリコー。同取り組みは、今後、社会が持つ同社へのイメージを、"コピーのリコー " から " 企業変革を支えるリコー " へと変えていくに違いありません。