
Microsoft Copilot は、当初 Bing Chat として提供されていた Web 上の AI チャット体験を 2023 年 11 月に「Copilot」へ改称したことを起点に、Windows・Bing/Edge・Microsoft 365 へ横断展開された Microsoft の AI アシスタントです。
Word/Excel/PowerPoint/Outlook/Teams のアプリ内連携は「Microsoft 365 Copilot」などの有償プランで提供されます。
すでに利用している方は、その効果を実感されているのではないでしょうか。Copilot は API 連携により、社内の CRM・ERP と連携して顧客・在庫を即時照会したり、Teams でのチケット管理や申請承認を自動化したりするなど、さらなる業務の効率化が期待できます。
本記事では、Copilot のさらなる活用に高い効果を発揮する API 連携について、活用できるプラグインを紹介したうえで、プラグインの作成も解説します。
Microsoft Copilot は API 経由で外部サービスと連携可能
そもそも API とは(Application Programming Interface:アプリケーション・プログラミング・インターフェース)の略称で、異なるアプリケーション間の機能やデータをやり取りするための取り決めです。定められた仕様に従って必要なときに呼び出すだけで、外部の機能を安全かつ効率的に利用することができます。
具体的な例としては、企業の Web サイトで駅からのアクセスを説明するのに Google Maps の API を使って Web サイトに地図を埋め込んだりすることができます。この API を使えば、内製で地図機能を作成する必要がなくなり、Web サイト構築の効率化が可能です。天気、道路混雑状況などのリアルタイム情報を API と連携して取得することもできます。
ビジネスシーンでは、API を活用して外部サービスと連携することで、社内の CRM システムから顧客情報を取得したり、ERP システムの在庫状況をリアルタイムで確認したりすることも可能になります。
Copilot プラグインとは?
プラグインとは、既存のアプリケーションなどに新たな機能を追加拡張するソフトウェアのことです。API がソフトウェアや Web サービスをつなぐインターフェースなのに対し、プラグインはソフトウェアの機能を拡張するために利用します。Copilotでは、プラグインを通じて特定のWebサービスとのAPI連携が可能になります。
Copilot のプラグインは ChatGPT プラグイン、Teams のメッセージ拡張機能、Power Platform コネクタの 3 種類です。
たとえば、ChatGPT プラグインでは最新のニュース情報や Web サイトの情報取得が可能です。また、Teams のメッセージ拡張機能では、Web サービスとの連携による外部システムの検索、Power Platform コネクタでは、ワークフローの構築やクラウドに接続されたクロスプラットフォームのビジネスアプリ構築などを行えます。
- ・ChatGPT プラグイン互換
- Web / API を介して外部サービスにアクセスし、最新情報の取得や業務データの照会・処理を実行できます。
- ・Teams のメッセージ拡張機能
- Teams 上のボタンやフォームから外部システムの検索・操作を呼び出し、結果をカードとして表示できます。
- ・Power Platform コネクタ
- Power Automate / Power Apps などから多数のサービスと接続し、ワークフロー実行やデータ連携を実現します。
これらは Copilot Studio で作成して組織内へ展開することで、Copilot の機能として活用可能です。自然言語の指示から横断的な操作を実行でき、既存システムと安全に連携できます。
Microsoft Copilot で利用できるプラグインの例
Microsoft Cpilotでは、パートナー企業がリリースするプラグインの活用が可能です。
たとえば、不動産検索サービス「Redfin」のプラグインを使い、Copilot で特定地域での空き物件を探せます。
ほかにも音楽生成 AI「Suno」のプラグインを使い、Copilot にイメージする曲調を入力するだけでオリジナルの楽曲が作成できます。
さらに今後、Teams のメッセージ拡張機能、Power Platform コネクタとの連携も進み、多くの基幹業務プラグインやサードパーティ製のプラグインが追加で利用できる予定です。
Copilot Studio でプラグインをつくることもできる
Copilot には、カスタマイズ用のプラットフォームである Copilot Studio が用意されています。このプラットフォームを使い、自身でプラグインを開発して組み込むことも可能です。
作成できるプラグインは、会話によって天気予報や最新情報の入手をできるようにする「会話プラグイン」。そして、OpenAI プラグインを追加したり、Power Platform コネクタを使用して外部データの更新や回答を取得したりできる AI プラグインの 2 種類です。
- ・会話プラグイン
- 会話プラグインは、Copilot Studio でエージェントの会話ロジック(エージェント フロー/旧「トピック」)と同様の手順で作成・公開できます。公開後は Dataverse のバックエンドに登録され、管理者の承認を経て組織のカタログ(プラグインカタログ)から利用可能になります。
- ・AI プラグイン
- AI プラグインはさらに 4 つに分類されており、要件に応じて会話制御とアクションを組み合わせた運用が可能です。外部サービスと安全に接続し、社内 CRM の照会や申請承認、外部データの取得・更新などを一貫して実行することができます。
- (1) AI Builder プロンプト
- (2) Power Automate フロー(トリガー「新しい Copilot から実行」+終端「Copilot に応答」)
- (3) カスタム コネクタ
- (4) OpenAI プラグイン(ChatGPT プラグイン マニフェストからコネクタ生成)
Copilot プラグインを作成するための準備
Copilot Studio でプラグインを作成するには、次の手順で進めていきます。
- 1. ライセンスの取得
- Microsoft Copilot Studio 用ライセンス (または既存の Power Virtual Agents ライセンス)
- Microsoft 365 Copilot 用ライセンス
- 2. リクエストの送信
- 「テナントのコパイロット プラグインを有効にする」というタイトルのサポートチケットを送信、もしくは組織の Microsoft カスタマーサクセスアカウントマネージャーにリクエストを送信します。
- 3. テナント管理者によるアプリの展開
- Microsoft 365 テナント管理者が Dynamics 365 と Copilot Studio アプリを Microsoft 365 管理センターで展開します。
これでプラグインを作成する準備は完了です。
Copilot プラグインを活用する際の注意点
ここでは、Copilot プラグインを活用する際の注意点を解説します。
外部プラグインとCopilot Studio のプラグインは別物
外部プラグイン(Teams のメッセージ拡張など)と Copilot Studio で作るプラグインは別物です。
Copilot Studio のプラグインは既存の Power Platform(Power Automate のフロー、コネクタ等)を Copilot から呼び出す「窓口」に過ぎず、専用の設定・共有方式はありません。構成や展開は各製品の標準手順に従い、Power Automate/カスタム コネクタ/Power Apps 側の仕様に沿って管理・共有します。
会話中のプラグイン切り替えができない
一度 Copilot で会話を開始すると、そのセッションで有効なプラグインが固定され、途中で別のプラグインへ切り替えることはできません。
プラグインを変更する場合は「新しいトピック」で会話を作り直してください。会話途中でもプラグインの切り替えができると勘違いしていると、意図しないプラグインが参照され、期待どおりの処理が行われないリスクがあります。
プライバシー保護に注意
Copilot プラグインは利便性が重視されており、プライバシー保護については必ずしも十分であるとはいえません。
他社製プラグインを利用する際は、プロンプトや会話内容などを通じて、従業員の個人情報や社内の機密情報などが提供元に共有されてしまう可能性にも留意する必要があります。他社製プラグインの導入時にはプライバシー声明や利用規約を必ず確認し、最小権限と取り扱いデータの範囲を厳格に管理しましょう。
コスト管理をしっかり
プラグインの利用頻度が高い場合、コストの管理にも注意が必要です。
Copilot API は、従量課金プランの場合、呼び出し回数に応じて追加コストが発生する可能性があります。
利用状況を定期的に監視して必要に応じて制限を設けるなど、コストにも意識を向けましょう。
APIを活用して Copilot の機能を拡張しよう
Microsoft のツールを使った業務の効率化を実現する Copilot。さらなる効率化や成果を求めるのであれば API の活用がおすすめです。
すでに多くのパートナー企業が提供するプラグインを活用することもできるうえ、ライセンスを取得すれば自身でプラグインを作成することもできます。
自身の業務に適切な API を活用することで Copilot の機能を拡張させ、さらなる成果向上を実現させましょう。