
本連載では、「ファイルサイズが大きくてメールに添付できない」「簡単に社外の人とファイル共有したい」という現場からの声と、「社員が取引先と安全にファイル共有ができているのか心配」という情報システム部門の心配ごとに焦点を当てて、対話形式でその解決策を解説します。
この連載を読み進めることで、現場と情報システム部門が共に納得できる、最適なファイル共有のあり方を見つけるヒントが得られます。
登場人物

笹邉課長(わくわく精密 情報システム部 企画課 )
精密機械部品や産業用ロボットの開発・製造・販売を手がけるメーカーの情報システム部門でMicrosoft 365を含むインフラ管理を務める。温厚で責任感が強いベテラン社員。現場の事情をよく理解しており、部下からの信頼も厚い。

鳥谷(AvePoint Japan 株式会社・顧客担当)
AvePoint 入社3年目。Microsoft 365運用管理に関する深い知識と、多くの企業の課題解決に携わってきた経験を持つ
鳥谷さん、また頭の痛い問題が起きてね…。


笹邉課長、どうかされました?
先日、営業部のエースのA君が、新製品の大事な設計図面データを、個人で契約しているクラウドサービスを使って取引先に送っていたことが分かったんですよ。
「メールだと容量が大きくて送れなかったから、つい……。」なんて悪びれもなく言うんだけど、こっちの心臓は止まりそうでしたよ。


うわぁ……それは肝が冷えますね。まさに「シャドー IT」の典型的な例ですね。
シャドー IT って?


会社で許可していないツールを、社員が勝手に業務で使ってしまう問題のことです。
最近は、いろんなツールが出ているから、そんな問題も起こりやすいのだろうね。
もちろん、A君には厳重注意したけど、きっと氷山の一角なのは分かっているんだ。
社員が勝手なツールを使っていたら、情報システム部門としても管理ができないし、情報漏えいの引き金になりかねないな……。


はい、調査結果を見てみましょう。
IPA(情報処理推進機構)が発表した「情報セキュリティ10大脅威 2025」でも、「不注意による情報漏えい等の被害」は組織部門で10位に入っているんです。
悪意がなくても、ほんの少しの「これくらい大丈夫だろう」という油断が、大きなインシデントにつながるケースが後を絶ちません。
まったくその通りだよ。社員に「ダメだ」と言うのは簡単だけど、「こうすればいい」という代替案をしっかり示さないと、結局は同じことの繰り返し。
かといって、セキュリティをガチガチに固めすぎて、業務のスピードが落ちたと現場から文句を言われるのも避けたい。このバランスが本当に難しい。


よく分かります。利便性とセキュリティは、常にトレードオフの関係にありますからね。
「安全だから、ちょっとくらい不便でも我慢して」では、なかなか現場には浸透しません。
そうなんだ。特に最近は、取引先との協業や、外部の委託先とのデータ連携も増えている。
社外とのファイル共有は、もはや日常業務の一部なんだよ。
それなのに、未だに「PPAP(ピーピーエーピー)」(パスワード付きZIPファイルをメールで送り、後からパスワードを別送する方法)に頼っている会社も多いけど、あれは安心なのかい?


残念ながら、PPAP(ピーピーエーピー) はセキュリティ上の問題が指摘されていて、PPAPを禁止する動きは、政府から企業にいたるまで広がりをみせています。
PPAP に関する詳しい解説は、こちらも合わせてご覧ください。
政府まで PPAP を禁止しているのか。もう、何が正解なのか分からなくなってきますよ。


笹邉課長のお悩み、非常によく理解できます。
実は、多くの企業の情報システム部門の方が、笹邉課長とまったく同じことで頭を抱えていらっしゃいます。
便利で、安全で、しかも管理がしやすい。そんな夢のようなファイル共有の方法があれば……と。
本当だよ。そんなものがあるなら、すぐにでも飛びつきたいくらいだ。


もしかしたら、そのお悩みを解決できるかもしれません。
御社が利用している「OneDrive」でのファイル共有を例に、見落としがちな「落とし穴」について、少しお話しさせていただいてもよろしいでしょうか?
OneDriveか。うちもMicrosoft 365を使っているから、もちろん活用しているよ。
ぜひ、聞かせてもらおうかな。


では、詳しくご説明させていただきますね。
第2回 予告
次回の連載では、多くの企業が利用するOneDriveを、社外とのファイル共有に活用する際の「見落としがちな落とし穴」に迫ります。ご期待ください!
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