大容量ファイルを安全に送信する際には、信頼できるファイル転送サービスの選定が欠かせません。大容量のデータはメールでの送信が難しく、メールシステムによっては3MBを超えると送れない場合があるため、無料・有料問わずファイル転送サービスの利用が広がっています。
無料サービスの中には大容量データを送信できるものもありますが、企業でファイル転送サービスを利用する場合はセキュリティの確保が欠かせません。もし十分な対策が施されていなければ、機密情報の漏洩や不正アクセスによるデータ改ざん、さらには顧客データの流出によって信用を失い、重大な損害賠償や取引停止に直結する危険性があります。安全に利用するためにも、法人向けのセキュアなファイル送信サービスを選定することが不可欠です。
本記事では、安全性を確保しながら大容量ファイルを送信できるサービスの選び方を詳しく解説します。ぜひ、参考にしてください。
大容量ファイルの送信・受け渡し方法の種類
大容量ファイルの送信・受け渡し方法は大きく分けて以下の7つの方法が挙げられます。それぞれの特徴は以下のとおりです。
- Eメール(添付ファイル)
- ファイル送信サービス
- ビジネスチャットツール
- オンラインストレージ(クラウドストレージ)
- USB やディスクなどの記憶媒体
- PC の共有フォルダ
- 社内ファイルサーバー( NAS /オンプレミス)
| 方法 | 特徴 |
| E メールに添付 | ・分割や圧縮、パスワード設定などの追加作業が必要・ PPAP (パス付き ZIP +別メールでパス送付)は情報漏えいリスクがあり禁止する企業が増えている |
| 記録媒体(USBメモリなど) | ・メモリに保存し持ち運ぶ方法・内部からの情報漏えいリスクがあり禁止されるケースが多い |
| ファイル転送サービス 例) firestorage 、ギガファイル便など | ・ Web ブラウザからファイルをアップロードし、 URLを相手に共有する・ファイルの保存期限や容量上限、1日の送信回数はサービスにより異なる・有料サービスはセキュリティ面で優れログ管理なども可能 |
| クラウドストレージ(オンラインストレージ) 例) OneDrive 、 Google ドライブなど | ・インターネット経由でファイルをアップロードし、 URL 共有やアカウント権限で受け渡し・継続的な共有も可能・法人向けのセキュリティ機能を備えたサービスが多い |
| ビジネスチャットツール 例) Teams 、 Slack 、 Chatwork など | ・メッセージにファイルを添付して、プロジェクト単位で素早く共有できる・サービスごとに容量上限がある・権限設計をしっかり行う必要がある |
| PCの共有フォルダ | ・社内 LAN 上でファイルを共有する方法・社外との受け渡しには不向き |
| 社内ファイルサーバー( NAS /オンプレミス) | ・自社内で大容量データを集中管理できる・社外共有には通常対応していない |
大容量ファイルの送信・受け渡し方法はさまざまですが、安全性の高い方法を選択することでビジネスパートナーや顧客からの信頼を得られます。近年多くの企業から採用されている方法は、セキュリティと効率的な運用を両立しやすいクラウドストレージです。セキュリティやコンプライアンス観点からも法人に適しています。
動画やサイズの大きな画像などは Eメールでの添付は難しいですが、分割や圧縮をすれば大容量ファイルの送信自体不可能ではありません。ただし、分割や圧縮、パスワードの設定などに手間がかかるため業務効率を低下させるおそれがあります。
従来の日本企業で多く使われてきたメール添付や USB などの記録媒体でのファイルの送信・受け渡しは、情報漏えいなどのセキュリティリスクが高いとして、禁止される企業も増えているようです。安全性の高い方法を選び、大容量ファイルの送信・受け渡しのセキュリティを高めることは企業の信頼性を向上させることにもつながります。
どの種類を選ぶとしても、自社に合った方法と適切な管理が重要です。
安全な大容量ファイル送信サービスを選ぶポイント
安全性の高い大容量ファイル送信サービスを選ぶためにチェックしたいポイントは、以下のとおりです。
- 送信可能なファイル容量の上限
- データ転送にかかる速度
- セキュリティの高さ
- 必要なコスト
- サービス導入後のサポート体制
各ポイントを押さえながら、自社に合ったファイル送信サービスを選ぶとよいでしょう。ここでは、それぞれのチェックポイントについて詳しく解説します。
送信可能なファイル容量の上限
まずは、送信可能なファイル容量の上限を確認しましょう。ファイル送信サービスによって、扱えるファイル容量は異なります。日常的にやりとりをしている大容量ファイルのサイズを確認し、そのサイズのファイルが送れる十分な容量があるかをチェックします。
たとえば、文書ファイルや軽い画像のやりとりが中心なら無料サービスでも問題ありません。しかし、動画や大量の画像などの重いデータのやりとりを頻繁に行うのなら、送信可能なファイル容量の上限が大きい有料サービスが適しています。
大容量ファイル送信サービスによっても対応容量が異なるため、送信するファイルの種類に応じて選択しましょう。複数のファイル送信サービスを利用するより、1つのサービスに絞り込んだ方が利便性が高くなるため、自社に合ったサービス選定が重要です。
データ転送にかかる速度
データ送信の速度も重要です。大容量ファイルの送信に対応していても、転送速度が遅いと業務に支障をきたしたりストレスになったりします。業務をスムーズに進めるためにも、ファイルの送受信が迅速に行えるファイル送信サービスを選ぶことがポイントです。
ファイル送信サービスによっては、動画などの重いデータの送受信に時間がかかってしまうものもあります。特に法人利用では、顧客を待たせるなど問題が発生する可能性もあります。大容量のデータでもスピーディーに送受信できるかどうかをしっかり確認しておきましょう。
特に大容量ファイルを日常的にやり取りする場合は業務の進行や生産性に大きく影響するため、転送速度も重視してサービスを選ぶとよいでしょう。
セキュリティの高さ
企業がやり取りするデータには機密情報が含まれることが多いため、サービス選定においてはセキュリティの高さが最も重要なポイントの一つとなります。セキュリティレベルが低いサービスを利用すると、情報漏えいのリスクが高まります。万が一漏えいが発生した場合には金銭的な損失だけでなく、社会的な信頼を失うなど企業にとって深刻なダメージにつながります。
大容量ファイル送信サービスを導入する際には、セキュリティ対策が十分に備わっているかを確認しましょう。具体的には、以下がポイントとなります。
・データを送受信や保存の過程で暗号化できるか
・ウイルス対策が組み込まれているか
・アクセスログを管理して不正利用や内部不正を追跡できるか
これらの機能が揃っていることで、情報漏えいのリスクを大幅に軽減することが可能になります。
一方で、無料のファイル送信サービスは気軽に利用できる反面、セキュリティレベルやアクセスログ管理が不十分であったりするケースが少なくありません。法人の場合には、こうした不安要素を排除するためにも、セキュリティ機能が充実した有料サービスを選択する方が安心です。
必要なコスト
大容量ファイル送信サービスを選ぶうえで、コストの比較も欠かせません。
大容量ファイル送信サービスには無料版と有料版があります。無料のファイル送信サービスはコストがかからず気軽に利用できる点がメリットです。しかし転送できる容量に制限があるほか、セキュリティ面での不安もあり、法人が利用するには適しているとは言えません。
一方、有料サービスでは料金体系がサービスによって異なります。一般的には、転送するデータ容量や料金が変動する従量課金制と、月額料金を支払って一定条件で利用できる定額制サービスの2つの方法があります。従量課金制は利用頻度が少ない場合や利用する人数が少ない場合にコストを抑えやすく、定額制は頻繁に利用する場合に安定した予算管理が可能です。
法人がサービスを選ぶ際には、どの程度ファイル転送サービスを利用するのか、転送するデータ容量がどの程度かなどを精査して、自社に合ったプランを選ぶようにしましょう。コスト面だけでなく、セキュリティや運用の信頼性も含めて総合的に判断することで、安心して業務を進めるための基盤を整えることができます。
サービス導入後のサポート体制
サービス導入後のサポート体制が整っているかどうかも重要な比較ポイントです。何らかのトラブルが起きた場合や、サービスの利用によってセキュリティインシデントが起こった場合にしっかり対応してもらえるかを確認しましょう。
また、対応時間や連絡手段なども確認しておくと安心です。企業によっては緊急性の高いデータをやりとりするケースもあるでしょう。対応時間が短かったり連絡手段が限られていたりすると、迅速な対応が難しくなることもあります。
その他にも、初心者向けのマニュアルやF&Qなどの自己解決につながる手段が充実していると、簡単なトラブルならサポートに頼らずに自社で解決しやすくなります。そのため、マニュアルなどの充実度も確認しておくとよいでしょう。
法人向けの大容量ファイル送信サービスはどんなものがあるのか
法人向けの大容量ファイル送信サービスにはさまざまな種類があり、それぞれ特徴や強みが異なります。以下は代表的な例です。
【サービス A 】
堅牢なセキュリティ対策を講じているファイル送信サービスです。クラウドサービスの国際規格も取得しており、人的要因によるセキュリティ事故を防ぐ工夫もされています。
例えば、金融機関や医療機関のように機密性の高い情報を扱う企業であれば、サービス A を選ぶことで安心して利用できるでしょう。
注意点として、最少人数のプランであっても大人数プランであっても、1ユーザー当たりの料金がほとんど変わらないことが挙げられます。また基本機能では送信容量に制限があり、機能拡張する場合はオプション費用が発生します。さらに基本の容量を超えた分については従量課金制になります。
大人数での利用、かつ1通あたりのデータ容量が大きいことが事前にわかっている場合は、容量無制限のファイル共有サービスを選択したほうがトータルの費用が抑えられる可能性があります。
【サービス B 】
有料プランで転送容量が無制限となっているため、大容量のファイルを定期的に送受信する場合にも安心です。また、サーバーがすべて国内にあるため、国内にデータを保管したい企業に適しています。
例えば、広告代理店や映像制作会社のように大容量データを頻繁に扱う企業に適しています。
注意点として、有料プランであってもデータ保管期間に制限があることが挙げられます。データ蓄積を考えている企業の場合は利用に適していない可能性があります。また、1回のデータ送信容量は無制限ですが、受取フォルダは別途契約が必要で、さらに容量に上限もあります。
大容量のデータを自社とクライアントの間で双方向にやりとりする場合や、長期間にわたってデータを保管する機能も必要な場合は注意が必要です。
【サービス C 】
企業間のファイル転送に特化したサービスです。一度に複数のファイルをまとめて送受信でき、大容量ファイルの送受信にも対応しています。暗号化や操作ログの保存といったセキュリティ機能も備えており、シンプルな操作画面で使い勝手も良くなっています。
例えば、取引先とのやり取りが多いがIT化を進めている途上の製造業など、複数のファイルを効率的に共有でき、ITに慣れていない従業員でも直観的に使えるようにしたい企業にはサービス C が有効と考えられます。
注意点として、小規模利用の場合は1ユーザー当たりの金額は非常に低価格であるものの、大規模利用者プランでは価格が高くなります。ユーザー数がそれほど多くない場合に大規模利用者プランを選ぶと、コストが割高になってしまう可能性があります。
またオンプレミス版は自社に合わせたカスタマイズが可能ですが、別途セキュリティ製品の導入が必要になるなどオプション購入が増えるため、トータルコストの確認が必要です。
実際に導入を検討する際には、法人の求める機能やコスト、利用頻度や企業の規模などによって異なります。セキュリティを重視するのか、大容量データの頻繁なやり取りを優先するのか、あるいは取引先との効率的な共有を重視するのかによって、選ぶべきサービスは変わってくるでしょう。
【法人向け】大容量ファイル送信の際の注意点
法人が大容量ファイル送信サービスを利用する際には、セキュリティ対策の確認が欠かせません。機密情報を扱う以上、サービス側の仕組みだけでなく、企業自身の運用体制も重要です。従業員へのセキュリティ研修やパスワード管理の徹底など、社内での取り組みと併せて安全性を確保することが、安心して業務を進めるための鍵となります。
ここでは、大容量ファイル送信の際に注意したいポイントを解説します。
無料サービス利用の禁止・制限
企業が大容量ファイル送信サービスを利用する場合には、無料サービスは避けるべきです。
無料サービスはコストをかけずに気軽に利用できる反面、セキュリティ対策が不十分であるケースが多く、情報漏えいなどのリスクが高まります。こうしたリスクは企業の安全性や信頼性を大きく損なう可能性があるため、法人利用においては利用を禁止または制限するのが賢明です。
法人として導入する場合には、セキュリティレベルの高い有料サービスを選ぶことが望ましいでしょう。万が一情報漏えいが発生すれば、金銭的な損害だけでなく企業の信用失墜にも直結します。信頼性の高い有料サービスを選定することが、安心して業務を進めるための基本的な対策となります。
誤送信対策の徹底
誤送信による情報漏えいを防ぐためには、企業として日常的に確実な対策を講じることが欠かせません。具体的には以下のような内容が挙げられます。
- 宛先や添付ファイルの最終確認の義務化
- 有効期限、ダウンロード回数の設定
- 継続してITリテラシー教育を行う
送信ボタンを押す前に必ず宛先と添付ファイルに間違いがないかをチェックすることを義務付けましょう。チェックリストを設定して確認するなど、最終チェックがしっかりと行われる運用を行います。
共有リンクに有効期限やダウンロード回数を設定することも効果的です。有効期限などを設定することで不要になった時点で自動的にアクセスできなくなるため、不必要な共有やダウンロードなどを防げます。
さらに、従業員に対するITリテラシー教育を定期的に実施することも重要です。システムやルールが整備されていても、利用者の理解や意識が不足していれば適切に運用されません。情報漏えいは外部からの攻撃だけでなく、日常的な誤操作によっても発生するため、教育を通じて従業員のセキュリティ意識を高めることが不可欠です。
誤送信対策は技術的な仕組みと人的な運用の両面から取り組むことで初めて効果を発揮します。企業はこの二つを組み合わせ、継続的に改善を図ることで、情報漏えいリスクを最小限に抑えることができるのです。
利用ツールやサービスのセキュリティ機能とコンプライアンスの確認
利用するツールによって搭載されているセキュリティ機能は異なります。利用を検討しているツールのセキュリティ機能を確認し、自社のセキュリティポリシーを満たしているかをチェックしましょう。
ファイル送信サービスを利用する際には、データの転送中だけでなくサーバー上でデータを
保管する際の両方で、暗号化処理が施されるかも重要です。共有相手に応じて「閲覧のみ」「編集可能」「ダウンロード禁止」というように、アクセス制限を切り替えられる機能があるかも確認しましょう。
また、国外にデータが保管されるサービスの場合は、日本の法規制はもちろんのこと、取引先との契約に抵触しないかを確認しておくことも大切です。
ISMAP認定 × Microsoft 365連携で安心と利便性を両立する「DenshoBako」
AvaPoint が提供する「 DenshoBako 」は、 Microsoft 365とシームレスに連携できる法人向けファイル共有ツールです。日本政府が運営するクラウドサービスのセキュリティ認定制度「 ISMAP (イスマップ)」に登録されており、信頼性の高いセキュリティ基盤を備えています。
容量・回数無制限で大容量データを日常的に送受信する企業に適しています。さらに、 Teams や OneDrive など Microsoft 365 と連携できるため、業務効率を損なうことなく安全なファイル共有が可能です。
共有するリンクごとにダウンロードの可否や有効期限、パスワード設定などを細かく制御、変更できるほか、適切な範囲でファイル共有ができたり、ログが期間無制限で保持できたりといった点も大きなメリットです。セキュリティ事故を防ぎ監査対応も容易になるなど、利便性とセキュリティを両立した環境を提供します。
まとめ
大容量ファイルの送受信を安全に行うためには、ファイル転送サービスの活用が効果的です。サービスには無料版と有料版がありますが、法人で機密性の高い大容量ファイルを扱う場合には、有料サービスの利用が最も安心です。
無料サービスは気軽に使える反面、容量制限やセキュリティ面での不安が残り、情報漏えいのリスクを抱えています。これに対して有料サービスは、暗号化やアクセスログ管理などのセキュリティ機能が充実しており、安全性を確保しながら効率的にファイルを送信できます。
導入にあたっては、送信可能なファイル容量の上限、データ転送速度、セキュリティレベルなどを比較し、信頼性の高い有料サービスを選ぶことが、企業の信用を守り、安心して業務を進めるための最善策となります。さまざまなポイントを比較し、自社に合ったサービスを選びましょう。