この事例のポイント
- Microsoft 365利用の定着後、公文書など重要データの保護が新たな課題に
- 自治体での実績と機能面での優位性を評価し、AvePoint Cloud Backupを採用
- 300万件を超えるドキュメントを安全に保護し、クラウド活用とセキュリティを両立

北海道の南西部、札幌市と函館市の中間に位置する伊達市は、約3万人の人口を有し、「北の湘南」と呼ばれるほど温暖な気候と交通の利便性から、道内でも住みやすい自治体として知られています。多品種の野菜を生産し、「伊達野菜」をブランド化するなど、農業・漁業を中心に豊かな産業基盤を持つのも大きな特徴です。
行政DXにも積極的に取り組んでおり行政手続きのオンライン化や窓口のデジタルサポート体制整備など、住民の利便性を高める施策や、市役所の業務効率化を推進しています。
Microsoft 365 導入開始後数年でTeamsやSharePointの利用は定着も、公文書等の重要データの保護が課題に
伊達市は、令和4年(2022年)度にMicrosoft 365 E3ライセンスを採用し、全正職員に展開。Teams、SharePoint、OneDriveを中心に約300ユーザーが利用しています。「デジタル人材派遣受入に関する連携協定」を締結している日本ビジネスシステムズ株式会社(以下、JBS)の支援も得てMicrosoft 365は浸透し、組織内のコミュニケーションと情報共有が飛躍的に高度化、効率化されました。
しかし、利用開始から数年が経過し、活用が進むにつれて新たな課題が顕在化してきました。SharePoint上には公文書決裁データをはじめとした重要データが蓄積されていましたが、Microsoft 365の標準機能だけでは重要なデータを十分に保護できないことが明らかになりました。伊達市 総務部 DX推進課 DX推進係 主任 石尾 萌 氏は以下のように振り返ります。
「Microsoft 365利用以前はオンプレミスのNAS でドキュメントのバックアップを取っていました。しかし、Microsoft 365導入直後は、クラウド上のデータは安全であり、バックアップは不要だと誤解していました。Microsoft 365の活用が進み、重要なデータがどんどんMicrosoft 365に溜まっていく中でリスクを精査した結果、バックアップは必須であると認識を改め、2024年の夏頃からMicrosoft 365のバックアップシステムについて検討を開始しました」
自治体での実績や機能面での優位性を評価し、AvePoint Cloud Backupを選定
伊達市では、ほとんどの業務システムや業務端末をインターネット接続系に配置する「β´モデル」を採用しています。これは、自治体ネットワークの「三層分離」における従来モデル(αモデル)の利便性や業務効率上の課題を踏まえ、セキュリティ対策を強化しながらクラウドサービスを柔軟に利用できるようにした新しい運用モデルです。ゼロトラストの考え方を取り入れ、認証やアクセス制御を厳格化することで安全性を確保します。
こうした環境では、ランサムウェア攻撃など、万が一の事態に備えて事業継続性を確保するためのバックアップも極めて重要となります。そこで同市は、JBSから提案されたAvePoint Cloud Backupを利用したバックアップサービスを採用。2025年2月に利用を開始しました。バックアップシステムの選定経緯について、石尾氏は以下のように説明します。
「他製品も調査しましたが、自治体での豊富な実績や機能とコストのバランスを評価し、AvePoint Cloud Backupを利用したバックアップサービスを選びました。Teamsチャットのバックアップ対応など、JBSから個別の機能についても詳細な紹介や提案があったことも、採用を後押しした要素です」
300万超のドキュメントを守る安心感 ―自治体業務に不可欠なバックアップ
JBSのサポートもあり、バックアップサービスの運用は当初からスムーズでした。重要データの保護ができるようになり、有事の際にはバックアップデータを利用できる体制が整ったことで、「安心感を得られたのが最大の効果です」と石尾氏は手応えを語ります。
さらに、伊達市では2025年1月にMicrosoft 365を活用した文書管理・電子決裁システムを導入しました。今後、機密情報や長期保存義務のある公文書を含む膨大なデータがSharePoint上に継続的に集約されるため、データ保護の重要性は一層高まっています。
「現在ではSharePoint上のデータは3.5TB、ファイル数は300万を超えています。長期保管が必要なデータも多くありますので、データ量はますます増えていく見込みです。これまでバックアップからのリストアが必要になったケースは発生していませんが、文書管理システムの管理者による誤削除などヒューマンエラーのリスクは常に存在します。こうしたリスクに対する心理的負担は、バックアップの導入により大きく軽減されました。ユーザーからのリストア依頼もまだありませんが、必要になった際は簡易操作で対応ができ、万が一の時にも迅速な復旧が可能な状態になっています。バックアップは『保険』のように捉えられがちですが、自治体業務においては必須の仕組みであると強く認識しています」(石尾氏)
クラウド活用とセキュリティを両立し、先進自治体として住民サービスのさらなる向上へ
伊達市では、Microsoft 365から3年が経過し、次のステップとしてPower Platformの活用をはじめMicrosoftのクラウド基盤を最大限に活用するために、職員の教育にも積極的に取り組んでいます。今後の展望について、石尾氏は以下のように語ります。
「Microsoft 365をさらに使い倒したいと考えており、Microsoft 365に含まれる多様なアプリを全職員がフル活用できる体制を構築したいです。今年度導入した文書管理・電子決裁システムも本格運用を進めていきます。業務効率化を職員全体で推進し、住民サービスの向上へも繋がる業務基盤をさらに盤石なものにしていきたいです」
過去の慣習にとらわれず、国のデジタル化指針の一歩先を行く自治体DXを推進してきた伊達市は、今後もクラウドを積極的に活用し、自治体DXのモデルケースとして継続的に進化を図る方針です。
