VDR(バーチャルデータルーム)とは?M&Aなど活用シーンを解説

技術が進歩し、働き方も大きく変わる中で、組織におけるデータ共有の方法も変化を続けてきました。たとえば機密書類についても、かつて従業員は廊下を歩いて役員室まで行き、書類の入ったフォルダを物理的に手渡ししていました。

リモートワークなどオンラインで仕事をする環境が整った今では、機密情報に限らずデータの大半はオンラインでやり取りされています。そのため、社内の同僚とのデータ共有においても、他の組織とのコラボレーションにおいても、データのセキュリティは最重要課題です。

しかし、非常に機密性の高いデータのセキュリティが不注意や意図的な形で侵害され、経済的にも風評的にも大きな損害を被るケースが後を絶ちません。この問題を防止する重要なソリューションとなりうるのが VDR (バーチャルデータルーム)です。

今回の記事では、 VDR についての基本的な知識やメリットとデメリット、活用シーンを解説します。また、 AvePoint が提供している VDR ツール 「 AvePoint Confide 」の導入事例も紹介します。

VDR(バーチャルデータルーム)とは?

VDR(バーチャルデータルーム)とは、 M&A や資金調達、医療業務、法務・監査業務などの高い機密性が求められるシーンで用いられる、機密情報を安全に共有・管理するためのオンラインスペースです。

VDR を利用することで、これまで物理的な会議室で行っていた重要書類の閲覧や共有を、インターネットを通じて安全に実施できます。きわめて細かいアクセス制御や操作ログの記録、データの暗号化など、高度なセキュリティ機能が備わっているため、機密情報を扱う業務での情報共有に最適です。

情報漏洩リスクを最小限に抑えつつ、業務のスピードと柔軟性を両立できるソリューションとして近年注目されています。

VDR とクラウドストレージの違い

VDR とクラウドストレージは共にファイル共有を行えるオンラインサービスですが、用途やセキュリティレベルに大きな違いがあります。

一般的なクラウドストレージは個人やチームでのファイルの保存・共有を目的としており、ファイルの管理機能やアクセス制御などのセキュリティ設定には限界があります。しかし、 VDR  は特に M&A や法務、財務関連の機密情報を扱うことに特化して設計されています。そのため閲覧権限の細分化、ダウンロード制限、操作ログの取得といった高いセキュリティ機能を備えており、内部だけではなく外部とのやり取りにも適しています。

VDR は情報漏洩リスクを極力排除しつつ、厳格な管理のもとで資料共有を行いたい場面に特に適した選択肢です。

VDR と物理データルームの違い

物理データルームは、 M&A などで機密文書を一か所に集め、関係者が現地で閲覧する形式です。 M&A で買収監査(デューデリジェンス)を行う場合、買収企業内にある会議室や、ホテルや貸し会議室などの外部会議室などを物理データルームとして利用します。

対して VDR は、これらの機密情報をオンライン上で管理・共有できる仕組みです。そのため、 VDR を使えば場所や時間に制限されることなく、遠隔から安全にアクセスでき、業務の効率化につながります。また、アクセス履歴や操作ログが自動で記録されるなど、監査面でも優れた管理が可能です。

VDR と SaaS 型 DMS の違い

SaaS 型 DMS (ドキュメント管理システム)は、社内文書の保存・管理・検索を効率化するためのツールです。一方、 VDR は外部関係者との安全な文書共有を目的としており、より高いセキュリティ対策が施されています。

たとえば、閲覧制限や透かしの自動挿入、操作ログの追跡機能などにより、機密情報の漏洩リスクを低減することができます。用途としては、社内向け管理が中心の DMS に対し、 VDR は外部公開を伴う重要業務向けに適しています。

VDR が注目される理由

VDR が注目される理由は、非対面での情報共有の需要拡大と、高度なセキュリティが求められる場面の増加にあります。

特に M&A や資金調達では、複数の関係者間で迅速かつ安全に機密情報をやり取りする必要があります。 VDR を導入することで、情報へのアクセス管理や証跡の確保、外部とのやり取りの透明性が担保され、プロジェクト全体の信頼性が向上するのです。

VDR(バーチャルデータルーム)のメリットとデメリット

VDR は、高度なセキュリティと効率的な情報管理を実現するツールとして、多くの企業で導入が進んでいます。しかし、導入にあたってはメリットだけでなく、デメリットも把握することが重要です。ここでは、VDR を活用する際のメリットとデメリットについて整理します。

VDR のメリット

VDR を活用する最大のメリットは、機密情報を高いセキュリティレベルで外部と共有できる点です。

M&A や資金調達などで複数の関係者が関与する場面でも、アクセス制御・操作履歴の管理・ダウンロード制限などにより、情報漏洩リスクを最小限に抑えることが可能です。また、オンライン上でドキュメントを閲覧・管理できるため、場所や時間に縛られず、業務のスピードや柔軟性が向上します。加えて、ログが記録されるため後からの確認や監査対応がしやすくなることも大きなメリットです。 VDR の導入により、透明性の高いプロジェクト運営が期待できます。

VDR のデメリット

VDR には多くのメリットがある一方で、導入や運用においていくつかの課題も存在します。主なデメリットとしては、セキュリティ機能が高度である分、初期設定や運用管理に手間がかかる点です。特に担当者や企業内の IT リテラシーが低い場合は、適切な運用体制を構築するまでに時間がかかる可能性があります。

また、導入や利用にあたっての料金体系が他のクラウドストレージより高額になることから、コスト面の検討も必要です。ほかにも、紙媒体として保管している書類を VDR で管理する場合、すべて電子化しなければなりません。

VDR(バーチャルデータルーム)の活用シーン

実際に VDR が活用されるビジネスシーンはどんなものがあるでしょうか。具体例を挙げて紹介します。

1.合併、売却、事業売却

企業合併や売却、事業売却などの M&A を行う際に実施する買収監査(デューデリジェンス)は、プロジェクトの成否を左右する非常に重要な工程です。コロナ禍により、取引の現場は対面からオンラインへと急速に移行しました。 VDR は取引の当事者がお互いの事業や財務ポートフォリオについて念入りに調査できる安全な空間として利用されています。

M&A の件数は近年急激に増加しており、多くの経営者が複数の取引や厳格なコンプライアンス対応、短期間のスケジュールに追われています。 VDR は社内外のチームが規制当局による審査用の文書の編集や共同作業を行える安全な空間として機能するだけでなく、複数プロジェクトで重要な指標と活動をモニタリングできるようになっており、さらなる業務の効率化につながります。

2.資金調達

VDR は、資金調達を考えている組織に最適です。投資家にアピールする際、企業は数週間から数か月かけて、複数の外部関係者と機密性の高い財務記録や事業記録を共有する必要があります。 VDR を活用すれば、大量のデータの中から必要なファイルを探し出すのも容易です。さらに、インサイトツールを搭載し、投資家の関心やエンゲージメントを測定できる VDR もあります。

3.法務

複雑な取引や訴訟では、法律顧問や外部の法律事務所、第三者との間で特権的なアクセスを必要とする情報の共有が行われることが少なくありません。刻々と状況が変化する訴訟では、 24 時間 365 日にわたって最新の文書や提出物にアクセスできることが重要です。 VDR は、出入り口がひとつしかない堅牢な金庫のように、オンラインデータを確実に守ります。

たとえば集団訴訟のような大規模で複雑な訴訟の場合、法務関係者だけではなく、原告も多人数になる可能性があります。VDR はプロジェクト全体を一元管理し、フォルダやファイル単位のきめ細かい権限を設定することで、各原告が自分の個人的なドキュメント以外は閲覧できないように設定できます。さらに、集団訴訟への参加者が増えた場合でも即座にデータルームに追加することが可能です。

4.監査とコンプライアンス

VDR は、定期監査や規制当局による調査への対応として、関連する財務諸表や年次報告書をまとめるのにも活用できます。また、必要に応じて外部の監査人等に権限を付与することも可能です。

VDR を使用すれば、監査やコンプライアンスの審査に必要なあらゆる文書や報告書をまとめるにあたって、安全の確保された空間でやり取りできます。さらに、具体的な納期や成果物に対する進捗を監視する測定指標も用意されています。

5.不動産

商業用不動産の取引は複雑です。買い手や貸し手、金融機関は、財務情報や設計図、物件自体の情報への迅速かつ簡単なアクセスを求めています。メールやオンラインのファイル共有といった従来型のツールでは、ファイルサイズにも限界があります。一方、VDR では複数の関係者が大容量ファイルの閲覧と共同作業が可能です。

また、取引の初期段階では広範囲な人間と情報を交換し、そこから徐々に関係者を絞り込んでいくことがほとんどです。 VDR では、状況に応じてアクセス制御を行えるため、プロジェクトが進むにつれて、権限の修正や取り消しを行うことが可能です。

6.知的財産

バイオテクノロジー、製薬、鉱業、エネルギーといった業界では VDR を導入し、知的財産や臨床試験データ、環境監査、プロジェクトへの入札といった事業の中核を担うデータの共有を効率化し、安全性を高めています。

VDRの導入でメール対応等の管理工数を削減した事例

AvePoint の VDR ソリューション「 AvePoint Confide 」を導入し、実際に管理工数の削減に成功した事例を紹介します。

紀陽銀行の子会社で法人向けに IT ソリューションを提供する紀陽情報システム株式会社

様では、 IT コンサルティング業務を行う際、機密情報の取り扱い方や情報共有などのコラボレーション効率に問題を抱えていました。そこで、すでに構築されていた Microsoft 365 環境との連携が可能な VDR ソリューション「 AvePoint Confide 」を導入。これまでメールのみで対応していた外部との情報共有を、一元管理することが可能になりました。月間約  70 時間相当の管理工数削減に成功し、進行スピードが上がることで業務の効率化も実現しています。

AvePoint Confide は、既存の Microsoft 365 環境を活用しつつ、安全性と効率性を両立させることが可能です。日本語対応のサポートも備えているため、安心して導入できます。

事例について詳しくは以下の記事をご覧ください。

2025年2月18日 – 紀陽情報システム、AvePointのVDR(バーチャルデータルーム)ツールを導入

バーチャル データ ルーム(VDR)でサイロ化、合理化、セキュリティの確保を実現

VDR は、もともと M&A をはじめとする限られた業界で利用されてきましたが、現在では多くの業界で、機密性の高いデータを扱うオンラインスペースとして広く活用されています。また、VDR は安全なオンライン空間として簡単に拡張できるため、機密データの保護だけでなく、ファイアウォールや IT 上の規制で利用できなかった外部ユーザーとのコラボレーションも容易です。

VDR の活用例は国内でも増加し続けています。VDR の導入で、セキュリティリスクを抑えた効率の良いデータ管理を行い、ビジネスの可能性を広げてみてはいかがでしょうか。

★VDR に関する詳細情報や、機密情報を扱うビジネス ユーザーのコラボレーション管理を強力に後押しする AvePoint の最新 VDR ソリューション、Confide の活用方法は下記よりご確認くださいませ。

・『Confide for Microsoft 365