クラウド移行とは?オンプレミスから移行する手順とメリットを解説 

企業のクラウド化を進めるにあたって、「手順がよく分からない」「コストをかける以上は失敗できない」と苦労している担当者は少なくありません。 

本記事では、クラウド移行とは何かという基本から始め、オンプレミス環境からクラウドに移行するメリットや注意点、進め方の手順、失敗しないためのポイントまでを解説します。 

クラウド移行とは?オンプレミスとの違いを解説 

クラウド移行という言葉を耳にする機会は増えていますが、その意味や背景を整理できていない方も多いのではないでしょうか。ここでは、クラウド移行の基本をオンプレミスとの違いを交えながら解説します。 

クラウド移行とは 

クラウド移行とは、企業が使っているシステムやデータを、オンプレミスからクラウドへ移すことを指します。 

オンプレミスとは、自社でサーバーなどの機器を用意し、社内でシステムを運用する方法です。自社の状況にあわせて自由に設計できる一方で、設備の準備や保守に手間とコストがかかります。 

一方、クラウドとは、インターネットを通じて外部の事業者が提供するサーバーやストレージ、ソフトウェアなどを利用する方法です。必要なときに必要な分だけ、処理能力や保存容量を契約して柔軟に使えます。 

つまり、クラウド移行とは、 IT システムの設置場所と管理のあり方を見直す施策です。これにより、より柔軟で無駄のない IT環境を構築し、業務効率化やコスト削減、 BCP (事業継続計画)の強化などを目指すことができます。 

クラウドとオンプレミスの比較 

クラウドとオンプレミスを比較したものが以下の表です。 

比較項目 クラウド オンプレミス 
費用(初期・維持) 初期費用:安い 維持費用:高い  初期費用が少なく、使った分だけ支払う 初期費用:高い 維持費用:安い  導入には施設・設備が必要。維持費用は社員が担当するため安い 
導入期間と難易度 速い・簡単  数日〜数週間で導入でき、設定も比較的シンプル 遅い・難しい  数カ月かかり、専門知識が必要 
カスタマイズ・拡張性 低い  サービス範囲内での調整に限られる 高い  自社に合わせた柔軟な設計・変更が可能 
セキュリティ強度 高い  技術力のあるベンダーにセキュリティ対策を任せられる 自社体制による  自社の方針、技術力に応じて対策が可能 
災害・障害時の対応 安心しやすい  データが分散管理され、自動復旧サービスもある 自社対応が必要  障害時は自社で復旧。事前の備えが欠かせない 

このような違いを踏まえると、クラウド移行は次のようなニーズを持つ企業に向いています。 

  • 初期費用を抑えて、すぐに業務を始めたい 
  • IT部門の人員や知識が限られている 
  • 拡張や縮小を柔軟に行いたい(スケーラビリティ重視) 
  • リモートワークや多拠点展開が必要 
  • 災害時の対応やバックアップを自社で整えるのが難しい 

業務内容や運用体制に応じて、自社に合った方式を選ぶとよいでしょう。 

オンプレミス環境からクラウド移行するメリット 

ここからは、クラウド移行を検討中の情報システム担当者や DX 推進の担当者に向け、そのメリットを具体的に解説します。クラウド移行の主なメリットは、以下の5つに分けられます。 

  • 運用コストの最適化 
  • セキュリティの最適化と省力化 
  • 人材の獲得と育成への好影響 
  • 業務効率の向上 
  • リスクの軽減 

それぞれ詳しく解説します。 

メリット1 運用コストの最適化 

オンプレミス環境では、物理サーバーの設置や保守、設置スペースの確保、人件費など、多くの費用や手間がかかります。一方でクラウド移行した場合、これらの設備投資は不要になり、サーバーの老朽化に伴う買い替えの費用や作業も発生しません。 

もちろん、クラウドを活用するには、一定の知識を持つ人材や、運用体制を支える専門部門は必要です。しかし、全体としてはコストや業務負担を抑えられるケースが多く見られます。 

さらに、クラウドはシステムの拡張や縮小がしやすく、事業の成長に応じてリソースを追加したり、不要な分を契約から除外したりできるため、無駄な支出を抑えやすい点も大きなメリットです。このような柔軟性の高さは、変化の激しい事業環境や将来の成長を見据える企業にとって、運用コストの最適化につながります。 

メリット2 セキュリティの最適化と省力化 

多くのクラウドサービスでは、高い技術力を持つベンダーがセキュリティやシステム不具合への対策を一元管理しています。そのため、オンプレミスでは実現が難しい高度な対策も、クラウドなら標準的に利用できるサービスが一般的です。 

具体的には、以下のようなメリットが挙げられます。 

  • 最新のセキュリティ対策を常に反映 

ベンダーが継続的にアップデートや脆弱性対応を行い、リアルタイムで脅威を検知・監視できます。 

  • データバックアップで幅広いリスクに対応 

災害やシステム障害、サイバー攻撃などに備え、複数拠点にデータを分散と自動保存が可能です。 

  • アクセス制御やログ管理がしやすい 

誰がいつ何をしたか記録され、不正アクセスの早期発見や内部統制にも役立ちます。 

  • ゼロトラスト設計(※)に対応しやすい 

ゼロトラスト設計は「信頼を前提としない」設計で、すべてのアクセスに本人確認や権限チェックを行う仕組みです。クラウド移行すると、多要素認証といったゼロトラスト設計に対応しやすくなります。 

ただし、どこまで対応できるかは、サービスの内容やプランによって異なるため、事前にしっかり確認しておきましょう。 

ゼロトラスト(ゼロトラストセキュリティモデル:zero trust security model)とは、「すべてのアクセスを信用せず、常に検証する」というセキュリティの考え方です。 
近年、クラウドサービスやモバイルデバイスなどの普及や働き方改革によるリモートワークの広がりにより、場所や時間に縛られず、誰でも仕事を行うサーバーなどにアクセスできる便利な環境が整ってきています。 
その一方で、「誰が、どこから、何にアクセスしているか」をきちんと確認することがますます重要になっており、企業では安全に人や端末を認証・管理する仕組みを取り入れる考え方が広まりつつあります。 
従来のセキュリティは「会社の中=安全、外=危険」という考え方で、社内ネットワークからのアクセスは特に確認せずに許可してしまう仕組みが多く使われていました(これを「境界型セキュリティモデル」と呼びます)。 
しかしこの方法では、たとえば社内の端末にウイルスが入ってしまったり、内部の人(従業員など)が不手際で、あるいは意図的に情報を外部に流してしまった場合などの「中からの攻撃」には気づくことが難しく、大きなトラブルにつながる恐れがありました。 
こうした問題を防ぐために、「すべてのアクセスは内部や外部を分けずに疑って確認する」という考え方で作られたのが「ゼロトラスト」という新しいセキュリティの仕組みです。
ゼロトラストは、社内・社外の区別なく、ユーザー・デバイス・通信内容などを都度検証し、必要最小限のアクセス権限のみを付与することで、情報漏洩や不正アクセスのリスクを最小化します。 

メリット3 人材の獲得と育成への好影響 

オンプレミス環境では、サーバーやシステムの保守・監視、トラブル対応まで社内で担う必要があり、担当者の負担が重くなりがちです。クラウド移行すればこうした運用業務をベンダーに任せられるため、日々の対応に追われにくくなります。 

その結果、自社の貴重な IT 人材をより重要な業務に集中させやすくなり、スキルを活かせる環境づくりにもつながります。働きがいの向上は、優秀な人材の採用や定着にもよい影響をもたらし、ヒューマンリソース全体の質向上が期待できるでしょう。 

メリット4 業務効率の向上 

オンプレミスではサーバーの調達や構築など、準備に数カ月かかることも少なくありません。一方でクラウドは、ベンダーが用意した環境を契約後すぐに利用できるため、短期間での運用開始が可能です。 

立ち上げまでの時間を短縮できれば、その分だけ業務の効率化や競争力の強化にもつながります。スピード感を重視する企業には特に適した選択肢といえるでしょう。例えば、早期の DX 実現や新規事業の立ち上げなどを目標にしている企業に向いています。 

メリット5 リスクの軽減 

オンプレミスでは、サーバーの老朽化や設備トラブルなど、物理的なリスクがつきまといます。一方、クラウド環境では、最新のインフラを常に利用できるため、こうしたトラブルのリスクを軽減できます。 

また、データを複数拠点に分散して保管でき、 BCP (事業継続計画)対応の強化につながるのも大きな特長です。実際、2011年の東日本大震災では、オンプレミス環境でデータを運用していた企業が業務停止に陥った一方、クラウドを活用していた企業では、データが堅牢な外部施設に保管されていたため、事業継続できたケースがありました。 

さらに、クラウドでは操作権限やログ管理の仕組みにより、誤操作や人的ミスの影響も最小限にとどめられます。このように、クラウドは幅広いリスクに対応できるため、業務の継続性を高めたい企業にとって、現実的で有力な選択肢といえるでしょう。 

オンプレミス環境からクラウドに移行するデメリットや注意点 

多くのメリットがあるクラウド移行ですが、一方で注意点もあります。クラウド移行を実行する前に、デメリット面についても把握しておきましょう。クラウド移行に伴うよくある落とし穴や失敗例を交えながら解説します。 

システム自体の自社に合わせたカスタマイズ性はオンプレミスより低い 

クラウドサービスは、あらかじめ多くの企業で使えるように設計された汎用的な機能を備えています。このため、オンプレミスのように自社業務に合わせて一から設計する柔軟性はなく、細かいカスタマイズが難しいケースもあります。 

【失敗例】 

自社には特定の業務に特化した機能や独自の画面構成などがあるが、クラウドに移行できず、ベンダーが用意する範囲内で対応するしかなくなり、業務効率化のためにクラウド化したのにかえって効率が悪くなった。 

このように自社独自の業務プロセスを厳密に再現したい場合には、クラウドサービスの制約を感じる場面が出てくるかもしれないため、注意が必要です。 

セキュリティの強度には注意が必要 

クラウドサービスは、信頼性の高いセキュリティ対策を備えたものが多く、安全性も一定レベルで確保されています。ただし、クラウド上での運用はベンダーに任せられる一方で、ユーザー側の設定や管理体制に課題があると、思わぬセキュリティリスクが生じかねません。 

【失敗例】 

アクセス権の設定ミスや、ポリシーの未整備によって、意図せず機密情報が外部に漏れてしまう事故が発生してしまった。 

クラウドではインターネット経由で外部の共有インフラにアクセスするため、オンプレミスと異なる独自のセキュリティ要件があり、既存のポリシーをそのまま流用すると問題が出るケースも考えられます。 

こうしたリスクに対応するには、クラウドに精通した IT 人材の確保が欠かせません。移行前後の運用設計を含めて、体制の見直しも並行して進めていく必要があります。 

使い方によっては費用が増えることもある 

クラウドは基本的に従量課金制で、使った分だけ費用がかかる仕組みです。逆にいえば、利用管理が不十分な場合にはコストが想定以上にふくらむこともあります。 

【失敗例1】 

不要なサービスを停止し忘れているケースや、データ転送量が増えていることに気づかないまま使い続けるケースが起きてしまい、気づかないうちに料金が上昇していた。オンプレミスよりコスト高になってしまって移行した意味がなかったかもしれない。 

【失敗例2】 

専門知識がないまま契約や設定を行ったため、実際に必要になるより多くのリソースを契約してしまい、予想外にコストが膨らんでしまった。 

こうした失敗を防ぐには、クラウドの料金体系や使い方に詳しい IT 人材の関与が不可欠です。 

移行難易度が高いケースや移行中のデータ損失リスクもある 

クラウド移行では、既存のオンプレミス環境からの移行がスムーズに進まないケースもあります。 

【失敗例】 

自社でずっと以前から使い続けているシステムをクラウドに移行したところ、さまざまな問題があるらしく動かなかった。 

特に古いシステムは、クラウドとアーキテクチャが異なっていたり、特定のハードウェアや独自仕様に依存していたりすることが多く、そのままでは動作しないこともあります。また、移行中のデータ転送でトラブルが発生すると、ダウンタイム(システムが一時的に停止する時間)や通信エラーによる業務停止やデータ損失のリスクもあるため注意が必要です。 

こうしたリスクを軽減するためには、一度にすべてを移行するのではなく、段階的に進める方法が有効です。例えば、まずはシステム構成を変えずにクラウドへ移す「クラウドリフト」を選び、その後、段階的に機能を最適化していく「クラウドシフト」へつなげるといった手法もあります。 

隠れたコストに気づかないケースがある 

クラウド移行にはシステム構築や人件費など、目に見えるコストが多く発生しますが、計画段階では見落とされがちな「隠れたコスト」にも注意が必要です。特に見落とされやすいのが、移行後の運用フェーズで発生する費用です。 

【失敗例】 

 IT 担当者や外部パートナーの人件費は見込んでいたが、クラウドを使う社員への教育コストを想定しておらず、トレーニング費用が追加で発生して予算を超えてしまった。 

上記以外にも、社員が新しいシステムの操作に不慣れな期間中は業務効率が下がり、残業が増えたり売上が落ちたりするリスクも否定できません。 

そのため、移行計画の早い段階から利用者向けの教育や周知活動を想定しておくことが大切です。信頼できるベンダーに相談しながら、 e ラーニング教材や社内研修などの外部教育サービスを組み合わせたり、社内 FAQ ツールを整備したりするなどによって、教育コストの増加を抑えやすくなります。 

クラウド移行の進め方8ステップ 

正しい手順に沿って進めれば、クラウド移行は決して難しいものではありません。ただし、いきなり全社的に導入するのではなく、まずは小規模なテスト移行やトライアル導入から始めることで、よりリスクを抑えながらスムーズに本格移行につなげやすくなります。 

クラウド移行を進めるための8つのステップを紹介します。 

課題を洗い出す 

現状で、ビジネスの課題となっていることを洗い出し、把握します。 

例えば、社員同士の情報共有がスピーディに行えていない、テレワークに対応できる体制が整っていないなど、自社の改善点をあげていきます。 

特に、会社のシステム面で業務の足かせになっている部分がないか、確認するとよいでしょう。クラウド化で解決する可能性があります。 

目的を設定する 

自社が持つ課題に対して、クラウド化が解決策として機能するかどうかを検討してください。課題の解決が見込めるのなら、それをクラウド移行の目的として設定することができます。 

課題の洗い出しと目的の設定が明確であるほど、経営層を説得する材料としても有効に働くでしょう。 

また、導入後に効果測定をする際にも、目的の達成度をみるのが有効です。 

現状の調査 

目的設定ができたら、現状を調査することが重要です。現状を把握しなければ、課題解決の難易度や必要な期間を予測できません。 

以下の点も調査すると、導入後の運用もスムーズになるでしょう。 

  • どの範囲までをクラウドに移行させればよいか 
  • 現行のシステムがどのくらい稼働できているか 
  • クラウド移行後もオンプレミス環境と共存できるか 

導入の順番を決定 

クラウド移行の規模が大きい場合は、移行の順序を決める必要があります。 

現状の業務の逼迫度や、システム間の連携による移行のしやすさなどを鑑みて、どの部分からクラウド移行を進めるかを決定しましょう。 

IT 部門の担当者や各部署の責任者にも意見を聞くほか、起こり得るリスクやトラブルも想定しておくことが重要です。 

サービスの決定 

洗い出した課題やクラウド化するシステム、効率化したい業務などから、適切なクラウドサービスを決定します。 

アプリケーションレベルからクラウド移行するなら SaaS、開発に必要なプラットフォームまでで十分なのであれば PaaS を選択することになります。コンピューティングリソース部分の移行には、IaaS が最適です。 

移行スケジュールを作成 

導入するサービスまで決定できたら、移行スケジュールを作成します。スケジュール作成では、以下のポイントを考慮することが大切です。 

  • スケジュールに無理がないか 
  • 解決したい課題に向けて間に合うスケジュールが組まれているか 
  • いつまでに、どの範囲まで完了させるか 
  • 各進行における担当者や人員を確保できるか 
  • 予算は不足していないか 

試験運用 

本番運用の前に必ず試験運用を行います。本番運用を開始してから致命的な問題が発覚すると、リカバリーに多くの時間とコストがかかるため、試験運用は欠かせません。 

クラウド環境でもアプリケーションが想定通りに機能するか、現場での使い勝手はどうか、設定の抜け漏れはないか、などをリハーサル時に確認します。 

本番運用・動作チェック 

試験運用が問題なければ、本番運用に移行します。自社の担当者とクラウドベンダーが連携して、移行作業がスムーズに進められるように手配することが重要です。 

本番運用の開始後にも動作チェックを行い、業務が問題なくできることを確認します。動作チェックに不備があると、将来的に従業員から不満が出る可能性があります。 

クラウド移行に失敗しないために必要なポイント 

クラウド移行を進める際、「やるべきことは分かっていても、どこに落とし穴があるのか不安」「本当にこの進め方で正しいのか判断しにくい」と感じている担当者は多いのではないでしょうか。 

ここでは、移行を失敗させないために重要なポイントを5つに分けて解説します。 

必ずテスト移行・トライアル導入を行う 

クラウド移行を成功させるには、まず小規模なテスト移行(トライアル導入)から始めるのが効果的です。限られた部門や業務で実際にクラウドを使ってみることで、システムの動作や操作性、セキュリティ性能を事前に確認できます。 

例えば、特定ユーザーへのアクセス制限が正しく機能するか、既存の業務フローにどのような影響があるかなど、全社展開前に課題を洗い出せます。また、クラウド環境での設定や操作に不慣れな担当者がいる場合、トライアル期間中に操作習熟を図ることで、移行後の混乱や問い合わせを減らしやすくなるでしょう。 

このように、テスト移行は技術的な検証だけでなく、組織全体の移行準備度を高める手段としても重要です。 

クラウドに移行する目的を明確化し費用を精査する 

クラウド移行の第一歩は、目的を明確にすることです。例えば「インフラ費用の削減」や「 DX の推進」など、何を達成したいかによって、選ぶべきクラウドサービスや移行手法が大きく変わってきます。 

目的が明確になったら、次に必要なのが費用の具体的な見積もりです。導入時の初期費用に加えて、月額の利用料、データ転送量に応じたネットワーク費、ストレージ容量の追加料金、保守・サポート契約など、運用段階まで見据えた精査が重要です。 

クラウドは従量課金が基本のため、利用状況によってコストが大きく変動します。過不足のない見積もりが、長期的な安定運用には欠かせません。目的と費用の両面から計画を立てておき、移行後に想定外の課題や負担が発生するリスクを最小限にとどめましょう。 

自社に最適なクラウドシステムが構築できるか比較検討する 

クラウド移行を成功に導くには、自社に合ったクラウドサービスを見極めて選ぶことが欠かせません。選定を誤ると、運用の複雑化やコスト増につながるおそれがあります。 IaaS ・ PaaS ・ SaaS といった提供形態の違いや、必要な自由度・保守負担などを整理したうえで、自社の目的に最適な形態を選びましょう。 

また、ベンダーの特徴も見逃せません。例えば Microsoft Azure を中心に扱っているベンダーは、 Windows Server や Office 製品との連携性に強みを持つ場合が多く、 Microsoft 環境が中心の企業に適しています。自社の業務環境や将来的な拡張性を踏まえて、複数の選択肢を比較検討することが重要です。 

IT人材を採用・育成する 

クラウドへ移行しても、外部ベンダーと専門的なやりとりができる人材の育成は欠かせません。「クラウドならすべてベンダーに任せられる」と考えられがちですが、完全に任せられるわけではなく、システム設計やセキュリティ、障害対応などでは、社内での判断や意思決定が求められます。 

こうした場面でクラウドの基本を理解していなければ、外部ベンダーとのやりとりが円滑に進まず、誤解や対応の遅れが起きるおそれがあります。例えば障害発生時、技術的な背景を理解していなければ、適切な指示や確認ができず、復旧が遅れるといったリスクが生じかねません。 

人材育成には時間がかかるため、状況によっては、即戦力人材の確保や外部ベンダーとの連携が必要です。また、自社での教育が難しい場合には、外部教育機関の活用も検討し、長期的に人材を育てる体制を整えることが重要です。 

不測の事態に備えて有料サービスへの投資も検討する 

ここまで説明したように、手順をしっかりと踏んでクラウド化することで、大きな失敗を防ぐことができます。 

しかし、下記のような問題点につまずくケースもあるでしょう。 

  • データの種類や量が多く、そもそも何から情報整理をすべきかわからない 
  • 禁則文字やファイル文字数オーバーなどで移行がスムーズにいかないことがある 
  • 移行に遅延が発生すると、日々の業務に支障が出る可能性がある 

こういった移行時の懸念を解消したいのなら、移行ツールの利用をおすすめします。 

Microsoft 365 への移行に特化した AvePoint のクラウド移行ツール「FLY」には、次のような特長があります。 

  • 移行前スキャン​ 

現在持っているデータ・コンテンツの全体像を把握できる機能です。移行すべきデータを洗い出すのに役立ちます。 

移行後に利用できないカスタマイズ内容などの洗い出しも可能です。 

  • コンテンツ・データ移行​ 

フィルター定義やマッピング、スケジュール設定で、移行タスクを自動化できます。 

  • モニタリング​ 

進行状況レポートが標準実装されているため、プロジェクトが見える化できます。移行中にデータが増加しても、簡単に確認できて便利です。 

クラウド移行は有料サービスに投資して、抜け漏れなく安全に行うことが大切です。

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自社の課題を明確にしてクラウド化を成功させよう 

クラウド移行は、初期費用を抑えつつ拡張性が高く、災害時の復旧力にも優れているのが特長です。一方で、設定ミスや知識不足によるセキュリティリスク、人材の確保や教育といった課題も伴います。 

成功のためには、まず自社の目的や課題を明確にし、いきなり全社展開せず段階的に移行を進めることが重要です。信頼できるベンダーと連携しながら、慎重に準備と運用を進め、リスクを抑えながらクラウドの効果を最大化していきましょう。 

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