
多くの企業が導入を進めている Microsoft 365 ですが、プランの違いがわかりづらく、どれを選べばよいのか迷う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、Microsoft 365 のそれぞれのプランについて特徴を紹介します。また、組織の規模や業務内容、セキュリティ要件などの観点から、失敗しないプラン選びのポイントもわかりやすく解説します。
Microsoft 365とは?作業の効率化や生産性の向上に不可欠なサービス
Microsoft 365 はサブスクリプションサービスのひとつで、 Word や Excel など最新の Office アプリを利用できるのが特徴です。
企業で Microsoft 365 を導入することで、ひとつのアプリでさまざまな作業ができるようになります。そのため複数のアプリやサービスを併用せずに済み、作業の効率化や生産性の向上に役立ちます。
また、 Microsoft 365 はプランに応じてセキュリティ機能が備わっているため、情報漏洩を抑制できるのもポイントです。
Microsoft 365 と Office 365 の違い
Microsoft 365 と似た名称のサービスに Office 365 がありますが、両者は別物です。 Microsoft 365 は Office 365 を含んだ上位ブランドになっており、アプリ中心の Office365 にプラスしてセキュリティやデバイス管理機能を利用することができます。
Office 365 は 2011 年にサービスが開始され、 2020 年に Microsoft 365 へと統合されました。現在「Office」の名称は一部の法人・教育向けやパッケージ版に残されています。
サブスクリプションサービスの Office365 と買い切り型の Office パッケージの違いは、クラウド型かオンプレミス型かどうかです。オンプレミス型の Office パッケージは初期コストが高く、最新版へのアップグレードを行いたい場合は追加費用が必要です。
クラウド型の Office365 は初期費用は抑えられるものの、継続的な支払いが必要のためランニングコストが掛かります。しかし、常に最新版を使用できるため、インターネット環境を利用できる場合には Office 365 の使用がおすすめです。
Microsoft 365 にはどんなアプリがある?
Microsoft 365 には、さまざまなアプリが搭載されています。利用できるアプリはプランによって異なりますが、一例として以下のアプリが挙げられます。
Office 365にも含まれるもの
- Outlook
- Microsoft Teams
- Excel
- PowerPoint
- Word
Microsoft 365で追加されるもの
- Microsoft Entra
- Exchange Online
- Microsoft Defender for Business
- Microsoft Purview
- Intune
Microsoft 365 に搭載されているアプリを使えば、テキストあるいは画面越しに社内のメンバーや取引先とコミュニケーションを図れます。また、表作成やスライド資料の作成、文書の作成、スケジュール管理、メンバーの出欠確認なども行えます。
Microsoft 365 の一般法人向けプランと大企業向けプランの違いを比較
Microsoft 365 には、一般法人向けプランと大企業向けプランがあります。
Microsoft 365 の一般法人向けプランと大企業向けプランの概要は以下の表の通りです。(2025 年 4 月現在)
種別 | 対象者 | プラン名:1 ユーザーあたりの月額費用(税抜) |
---|---|---|
一般法人向け | 中小企業 | ・Microsoft 365 Business Basic : 1,079 円 ・Microsoft 365 Business Standard : 2,249 円 ・Microsoft 365 Business Premium : 3,958 円 ・Microsoft 365 Apps for business : 1,483 円 |
大企業向け | 従業員 301 人以上の大企業 | ・Microsoft 365 E3(Teams なし) : 5,059 円 ・Microsoft 365 E5(Teams なし) : 8,208 円 ・Microsoft 365 F3 : 1,199 円 |
中小企業におすすめの一般法人向けプラン
一般法人向けプランの場合は、必要な業務用アプリがすべてそろっていながらも、大企業向けプランよりも利用料金が安いのが魅力です。それぞれのプランについて詳しく解説します。
Microsoft 365 Business Basic
Business Basic は、コストを抑えつつも業務に必要な基本機能を備えたプランです。
Web 版の Office アプリ( Outlook 、 Word 、 Excel 、 PowerPoint )に加え、メールホスティング( 50 GB )、 Microsoft Teams を活用したオンライン会議や共同作業が可能です。クラウドストレージは 1 TB と余裕があるため、リモートワーク中心の企業やスタートアップにも最適と言えます。シンプルな構成で低コストでの導入が可能です。
このような企業におすすめ
- 現在パッケージ版の Office を利用しており、Teams や SharePoint を追加で使いたい
- コストを抑えて、Web アプリ中心で業務を行う環境に移行したい
- デスクトップアプリの利用頻度が少なく、クラウド環境での共同作業を重視する
Microsoft 365 Business Standard
Business Standard は、Office アプリのデスクトップ版を含む充実したプランです。
Business Basic のすべての機能に加えて、常に最新の Word 、 Excel 、 PowerPoint 、 Outlook などのアプリをインストールして利用できるため、オフライン環境でも作業可能です。
このような企業におすすめ
- オフライン環境での作業や外出先での利用が発生する
- クラウドとデスクトップの両方を活用したい中小規模の企業
Microsoft 365 Business Premium
Business Premium は、Business Standard のすべての機能に加えて、高度なセキュリティとデバイス管理機能である EMS を利用できます。
Microsoft Defender によりマルウェアやランサムウェアからの保護が強化され、Intune による端末管理が可能です。
このような企業におすすめ
- リモートワークを安全に運用したい中小企業
- 従業員の端末を一括で管理し、セキュリティポリシーを適用したい
- 情報漏洩やマルウェア感染を未然に防ぎたい業種(医療、士業、ITなど)
Microsoft 365 Apps for business
Microsoft 365 Apps for business は、 Office アプリのインストール利用に特化したプランです。 Word 、 Excel 、 PowerPoint 、 Outlook などの最新版アプリを最大 5 台の PC やモバイル端末にインストール可能で、 1 TB のクラウドストレージも利用できます。
このような企業におすすめ
- メールや会議機能は他の手段で運用しており、 Office アプリだけを使いたい
- 文書作成、表計算、プレゼン作成などの業務に集中したい部署や個人利用
- パッケージ版 Office の代替として、常に最新版を利用したい
ユーザー数に制限がない大企業向けプラン
大企業(エンタープライズ)向けプランはユーザー数に制限がなく、機能やセキュリティー対策が充実しているのが特徴です。
それぞれのプランについて詳しく解説します。
Microsoft 365 E3 ( Teams なし)
E3( Teams なし)は、セキュリティやコンプライアンス機能を重視する企業向けのプランです。
インストール可能な Office アプリに加え、情報保護、デバイス管理、アクセス制御などの高度な機能を備えています。 Exchange や SharePoint 、 OneDrive なども含まれ、クラウドベースでの業務環境を構築可能です。 Microsoft Teams は含まれないため、別途必要に応じて追加契約が必要です。
このような企業におすすめ
- 社内外の情報漏洩リスクに備え、データ保護やアクセス制御を強化したい
- 監査対応や法令遵守(コンプライアンス)を求められる業種(医療、金融、公共など)
Microsoft 365 E5 ( Teams なし)
E5( Teams なし)は、 E3 のすべての機能に加えて、より強力なセキュリティ、コンプライアンス、分析機能を搭載した上位プランです。
Microsoft Defender for Endpoint や Azure Active Directory Premium 、Microsoft Purview による監査・情報保護機能が強化されています。 Power BI Pro も含まれており、データ分析を通じた業務改善も可能です。
このような企業におすすめ
- 高度なセキュリティとコンプライアンス要件を満たす必要がある大企業・金融・公共機関
- ID 管理や監査、情報保護を一元的に強化したい
- BI ツールを活用し、部門横断での業務改善・意思決定を推進したい
Microsoft 365 F3
Microsoft 365 F3 は、現場作業のために開発されたコスト効率の高いプランです。
Web 版の Office アプリやメール、 Teams や Sharepoint による連携機能が中心で、必要最小限の機能で現場業務をサポートします。
セキュリティやデバイス管理機能も軽量化されており、大規模な現場人員を抱える企業にとって経済的なプランと言えます。
このような企業におすすめ
- 工場・店舗・物流などの現場スタッフ向けに IT 環境を整備したい
- 最低限のコミュニケーション・業務連携機能を低コストで提供したい
- ライセンスコストを抑えつつ、社内連携・情報共有の効率を高めたい
Microsoft 365 プランの選び方
Microsoft 365 を導入する際は、組織の規模や業務内容、必要な機能、セキュリティ要件といった複数の観点からプランを比較検討することが重要です。
自社に最適なプランの選び方について、ポイントを解説します。
組織の規模で選ぶ
Microsoft 365 は、組織の規模に応じて適したプランが異なります。
従業員 300 名未満の中小企業であれば、一般法人向けの Business 系プランがコストと機能のバランスに優れており適しています。一方、 300 名以上の大企業では、ユーザー数の制限がない エンタープライズ系プランを選ぶことで、全社的な利用にも柔軟に対応できます。
導入時には、自社の従業員数や今後の拡張性も踏まえてプランを選ぶことが大切です。
必要なアプリやサービスで選ぶ
業務に必要なアプリケーションやサービスの内容によっても、選ぶべきプランは異なります。
メールやオンライン会議を中心に利用する場合は「 Business Basic 」、加えて Office アプリを必要とする場合は「 Business Standard 」や「 Business Premium 」が候補となります。
大企業でより高度な業務管理や自動化機能を求める場合には、「 E3 ( Teams なし)」や「 E5 ( Teams なし)」が適しています。現場作業員向けに軽量化したプランを使いたい場合は「 F3 」が選択肢に入ります。
導入前に、自社に必要な機能の洗い出しを行うことが有効です。
セキュリティの強度で選ぶ
情報漏えいやマルウェア対策など、セキュリティを重視する企業にとっては、強固な保護機能を備えたプランの選定が重要です。
「 Business Premium 」や「 E5 ( Teamsなし) 」などのプランでは、多要素認証やデータ損失防止( DLP )、高度な脅威対策機能が利用できます。
業種や取り扱うデータの機密性に応じて、必要なセキュリティレベルを見極めることで、企業全体のリスクを最小限に抑えることが可能になります。
Microsoft 365 を導入する 4 つのメリット
Microsoft 365 を導入すると、以下のようなメリットがあります。
- 常に最新版の Office 製品が使える
- デバイスを問わず利用できる
- セキュリティ性が高い
- 社内コミュニケーションが円滑になる
それぞれどのようなメリットがあるかひとつずつ解説します。
常に最新版の Office 製品が使える
Microsoft 365 を導入すると、常に最新のバージョンにアップデートされるのがメリットです。
買い切り型の製品の場合は、買い替えをしないと新しい製品を使えません。しかし、クラウド上で管理できる Microsoft 365 は、わざわざ製品を買い直さなくても最新版にアップデートされます。
また、 Microsoft 365 は買い切り型とは違いサポートが終了する心配がないため、セキュリティ面でも安心して利用できます。
デバイスを問わず利用できる
Microsoft 365 を導入すれば、他のデバイスでも利用できるのもメリットです。
Microsoft 365 は Web 版やモバイル版、 PC 版用のアプリが用意されており、デバイスを問わず利用できます。 Mac OS と Windows OS の両方に対応しており、 iPhone や Android 、タブレットでも利用できるので、リモートワークや外出先で作業するときに便利です。
セキュリティ性が高い
Microsoft 365 はセキュリティ性能が優れているのもメリットです。
スパムやマルウェアの自動検出ができ、データ漏洩や損失を防ぐための機能、データ転送時の暗号化など、あらゆるセキュリティ機能が装備されています。
特に一般企業向けの上位プランまたは大企業向けのプランでは、高いセキュリティ機能が備わっており、機密情報を安全に保護できます。
また、 端末とクラウドサービスとの通信時やクラウドサービス間の通信は暗号化されるため、情報漏洩を防げるのも大きなポイントです。
ドキュメントやメール、添付ファイルを保存するときにもデータが暗号化されるので、外部に情報が漏れるリスクを抑えられます。
社内コミュニケーションが円滑になる
Microsoft 365 を利用すると、社内のコミュニケーションの活性化に役立ちます。
チャットを使って手軽に連絡したり、会議システムで画面越しに対面で会話したりすることで、コミュニケーションの促進につながります。
また、他の部署や別のチームと連絡を取ったり、ファイル共有したりするときに使うコミュニケーションツールを集約することで、業務の効率化や生産性の向上が期待できるのもメリットです。
Microsoft 365を導入する際の 2 つのデメリット
Microsoft 365 を導入するメリットがある一方で、デメリットも存在します。
Microsoft 365 を導入する際に考えられるデメリットは以下の通りです。
- 運用負荷が高くなりやすい
- 通信障害のリスクがある
それぞれのデメリットについて解説します。
運用負荷が高くなりやすい
Microsoft 365 は高いセキュリティ性を備えていますが、 Intune によるデバイス登録など、運用には専門知識が必要になります。そのため、プラン選定では、機能だけでなく運用負荷にも目を向けることが大切です。特に少人数体制の場合、特定の担当者に作業が集中し、管理が不安定になるリスクがあります。
運用負荷を軽減させたいなら、 AvePoint Online Services の活用がおすすめです。 SharePoint 権限の一括管理やバックアップなどのサポート機能により運用を効率化できるため、少人数でも安定した管理体制を維持できます。 DX の推進にもつながり、クラウドシフトによる業務の効率化と生産性向上を実現できます。
AvePoint Online Services について詳しくは以下のページをご覧ください。
Microsoft 365 の利活用を促進する
AvePoint製品の機能紹介はこちら
通信障害のリスクがある
Microsoft 365 は多くの機能がクラウドベースで提供されているため、インターネット接続が不安定な環境では、業務に支障が出る可能性があります。
特に Web 版は常時オンライン環境が前提となっており、通信障害や電波が届かない場所では利用できません。一方で、デスクトップ版は端末にアプリをインストールして使用するため、オフラインでも文書の作成や編集が可能です。オフライン中に行った編集は、デスクトップ版であればオンライン状態になった際、変更内容が自動で更新されます。
ただし、これらの利用可否はプランによって異なります。たとえば Business Basic は Web 版のみが提供され、デスクトップ版は含まれていません。
プランを選ぶ際は利用時の通信環境も考慮する必要があります。
自社に最適なプランを選んで Microsoft 365 を有効活用しよう
Microsoft 365 には中小企業向けから大企業向けまで幅広いプランが用意されており、業務内容や組織の規模、セキュリティ要件に応じて最適なものを選ぶことができます。
一般企業向けの Business プランでは基本的な Office アプリやクラウドサービスが中心となり、 Standard や Premium プランではメール機能や高度な管理機能も利用できます。一方、大企業向けのプランでは大規模運用やセキュリティ強化を前提とした機能が用意されています。
導入の際には機能やコストだけでなく、運用負荷や人員体制も含めた視点でプランを検討することが重要です。自社の目的に合わせたプランを選び、 Microsoft 365 を活用して業務効率改善や生産性向上を図りましょう。